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更新日令和3(2021)年2月26日

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第17回柏の歴史企画展 幽霊とものゝけ ~柏の怖い絵見に来ませんか~

古内裏

歌川国芳 相馬の古内裏(坂東市立猿島資料館蔵)

はじめに

「人間の肉体は滅んでも、その体内にあった霊魂はなお生存を続けていく」という考え方は、洋の東西を問わず古くからあったようです。特に日本では現世に強い恨みや未練を残して死んだものは、怨霊となってこの世に現れると考えられ、平将門のように畏怖すべき存在となって伝承されてきました。

また、仏教思想が庶民の間に浸透していた江戸時代には、地獄と極楽の世界観が広がり、地獄絵などが描かれ、牛や馬の頭を持った獄卒も登場します。

今回の企画展はこうした幽霊や鬼、怨霊などを通して、当時の人々の心情にも触れています。開催期間は小中学校の夏休み期間と重なります。その強烈な印象から、少年時代の柳田國男を民俗学に向わせる契機となった、徳満寺の「間引きの絵馬」も特別に展示しました。怖い絵を通して子供さんにも興味を持っていただければ幸いです。

一.間引きの絵馬

間引き絵1(JPG:41KB)

弘誓院の間引き絵馬

「母親が生まれたばかりの我が子を、口と尻を押えて絞め殺す。」

その光景は恐ろしい鬼の形相とともに、見るものの心に強い衝撃を与えたことでしょう。絵面には古文書がすきまなく書かれ、右上に「子孫繁昌手引草」とタイトルがつけられています。

この額は弘化四年(一八四七)、観音霊場巡拝の記念として、泉村の染谷伊兵衛らによって奉納されました。彼らが巡った秩父の菊水寺には同様の大絵馬があり、これを参考にしたのです。

「子孫繁昌手引草」は子供の間引きをいましめるため、各地で利用されました。間引きの図もこの近辺では柳戸のほかに、流山市の光明院や利根町布川の徳満寺に遺されています。

二.徳満寺と柳田國男

間引き絵2(JPG:58KB)

徳満寺の間引き絵馬

利根川舟運で栄えた布川河岸(現・茨城県北相馬郡利根町)の徳満寺は、古い歴史を伝える寺院です。子育て地蔵尊の信仰で知られ、例年暮に開かれる「地蔵市」の賑わいは、赤松宗旦の利根川図誌でも大きく取り上げられています。本堂の「間引き絵馬」は、民俗学者柳田国男によって紹介され有名になりました。「鉢巻を締めた女が、産んだばかりの赤ん坊を、力いっぱい抑えつけ、障子に映る女の影には角が生えている」というものです。
「その意味を私は子供心に理解し、寒いような気持ちになった」と國男は後に述べています。

『故郷七十年』 柳田國男著

「その図柄は、産褥の女が鉢巻を締めて生まれたばかりの嬰児を抑えつけているという悲惨なものであった。障子にその女の影絵が映り、それには角が生えている。その傍に地蔵様が立って泣いているというその意味を、私は子供心に理解し、寒いような心になったことを今も憶えている。」(のじぎく文庫編 1989)

柳田國男

柳田國男は、明治8年兵庫県田原村(現・神崎郡福崎町)に生まれました。明治20年故郷を離れ、茨城県北相馬郡利根町布川で医院を開いていた兄鼎(かなえ)のもと、2年間を過ごしますが、このときの体験が、後に民俗学を志すきっかけとなったといわれています。

農商務省職員として農政視察や講演のため全国の農山村を旅し、各地に残る習俗や伝承などの調査を行います。九州椎葉村の『後狩詞記』や、東北の習俗・口碑を記録した『遠野物語』等を著すなど、日本の民俗学に大きな足跡を記しました。

三.地獄と極楽

人は死ぬと三途の川を渡り、閻魔大王を始めとする十王に7回の裁きを受け、生前の善悪の報いとして五悪趣(天上・人間・餓鬼・畜生・地獄)と呼ばれる五つの世界に赴きます。最も罪が重いものが落とされるのが地獄で、あらゆる責め苦が待っていました。

庶民は死後、極楽に行くことを願って、法を守り善行を積むことに努めたのです。特に近世は徳川幕府の「寺請制度」政策の影響もあり、仏教は人々の心に深く浸透していました。寺院はお盆や春秋の彼岸など、檀家が集まるときにはこうした地獄を描いた掛け軸を掲げ、啓発に努めました。

四.幽霊画の世界

幽霊や妖怪は、江戸時代を迎えると流行を極めていた歌舞伎にも登場し、大きな人気を得ていきます。さらに、明治時代にかけては、「幽霊画」が日本画や浮世絵のジャンルのひとつとして、人々に支持されました。登場する幽霊は恐ろしいばかりではなく、時に美しく、時に愛らしい姿で描かれ、不思議な魅力を漂わせています。

五.将門の怨霊

平将門は平安時代、都に対して反乱を起こし、志半ばにして無念の敗死を遂げた人物です。死後は菅原道真や崇徳上皇などと共に、怨霊の代表として畏怖されました。後世の人々は、将門を「強大な権力に立ち向かった風雲児」というイメージを作り上げ、支持していったのです。柏市は将門伝説の多い土地です。後に父の仇を討とうとする滝夜叉姫のモデルとなった如蔵尼の伝承も遺されています。

参考文献

  • 利根町史編さん委員会編『少年柳田國男』(平成二年二月第一刷発行)
  • のじぎく文庫編『故郷七十年』(平成元年四月第一刷発行) (展示中)
  • 松崎憲三『閻魔信仰の系譜―日本人の地獄・極楽観についての覚書ー』
  • 千葉県立大利根博物館・千葉県立関宿城博物館編『英雄・怨霊 平将門~史実と伝説の系譜~』
  • 坂東市立猿島資料館・坂東市商工観光課編『平将門展―千年の時を生きる将門―』(平成一八年十月発行)
  • 福崎町立柳田國男・松岡家記念館編『柳田國男アルバム 原郷』 (展示中)
  • 福崎町教育委員会発行『福崎と柳田國男』(柳田國男読本) (展示中)
展示資料(平成26年8月5日現在)

No.

名称

年代

所蔵

1

間引き絵馬

弘化4年(1847)

弘誓院(柳戸)

2

間引き絵馬

年不詳

徳満寺(茨城県利根町)

3 利根川図誌 安政5年(1858) 吉田家旧蔵(花野井)

4

五悪趣図

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

5

六道図

宝暦13年(1763)

南蔵院(片山)

6

地獄図

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

7

九相詩絵巻

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

8

驚かすお化け

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

9

蝦蟇(がま)仙人

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

10

蝦蟇仙人(塩川文麟)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

11

雪女

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

12

船幽霊(歌川国芳)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

13

幽霊画(桂月・かつらつき)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

14

妖怪たち

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

15 幽霊画(華堂)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

16 小町幽霊(伍亭)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

17

酒の息から観音様

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

18 庭霊写(文城)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

19

幽霊画(功業)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

20

生霊(白峰)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

21

幽霊画(伊藤晴雨)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

22

蝦蟇仙人

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

23

髑髏(どくろ)から現れた幽霊

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

24 幽霊画

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

25 幽霊画

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

26

お岩(四谷怪談)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

27 幽霊画

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

28

今様疑源氏十 -滝夜叉姫-(歌川芳幾)

年不詳

坂東市立猿島資料館

29

相馬の古内裏(歌川国芳)

年不詳

坂東市立猿島資料館

30

百鬼夜行(歌川芳幾)

年不詳

坂東市立猿島資料館

31

妖怪図(わうわう)

年不詳

法林寺(名戸ケ谷)

No.28、29、30は6月29日(日曜日)までの展示でしたが、坂東市立猿島資料館様のご厚意により、開催期間中は展示できることとなりました。

展示の様子

展示入り口(JPG:107KB) 展示室新画像(JPG:82KB)

展示2(JPG:89KB) 展示4(JPG:75KB)

展示室奥から画像(JPG:118KB) 鬼の灯篭(JPG:54KB)

掲載しているすべての画像・資料は、無断での複製・転載を禁止します。
資料や写真をご提供いただいた方々には改めて御礼を申し上げます。

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同時開催 第18回芹沢銈介作品展『沖縄みやげ』

ー第18回芹沢銈介作品展『沖縄みやげ』ー

開催期間

平成26年5月31日(土曜日)~平成26年9月7日(日曜日)

開館時間

午前9時30分から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)

休館日

月曜日(祝日、振替休日は開館)、展示替期間

入館料

無料

場所

柏市郷土資料展示室

〒277-8503
千葉県柏市大島田48-1(柏市沼南庁舎2階)

(電話)04-7191-1450

郷土史公開講座 (注意)本講座は終了しました。

たくさんの方にご参加していただき誠にありがとうございました!!(参加者133名)

日時

平成26年7月10日(木曜日)午前9時30分~午後0時30分(開場午前9時)

会場

大会議室(沼南庁舎5階)

スケジュール

第1部 午前9時35分~午前10時30分

弥生から古墳へ 渡辺健二(柏市教育委員会文化課 学芸員)

第2部 午前10時40分~午前11時55分

間引きと歴史人口学 髙橋美由紀氏(立正大学経済学部 准教授)

第3部 正午~午後0時30分

柏市郷土資料展示室見学

  • 第17回柏の歴史企画展 『幽霊とものゝけ』
  • 第18回芹沢銈介作品展 『沖縄みやげ』

定員

先着120名

参加費

無料

共催

生涯現役ときわ会 柏市教育委員会

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お問い合わせ先

所属課室:生涯学習部文化課

柏市大島田48番地1(沼南庁舎3階)

電話番号:

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