平成30年度第2回柏市文化財保護委員会会議録

1.開催日時

平成30年10月15日(月曜日)午後2時から5時

2.開催場所

沼南庁舎5階 大会議室

3.出席者

(委員)
椎名宏雄委員(会長)、藤井英二郎委員(副会長)、清藤一順委員、倉田恵津子委員、萩原法子委員、石野律子委員、井上哲郎委員、塩澤寛樹委員

(事務局)

河嶌貞教育長、小貫省三生涯学習部長、小宮山勉文化課長、吉田敬専門監、黒須雅子統括リーダー、江藤隆博担当リーダー、高城大輔主査、井上文男主任、谷口友季主事

4.内容

  1. 開会
  2. 教育長挨拶
  3. 報告
    平成30年度事業について
  4. 議題
    文化財保存活用地域計画の策定について
    1. 計画策定協議会の設置について
    2. 事前把握及び調査事業業務について
    3. 各分野における柏の特徴や特筆される事物について
    4. その他

5.  閉会

 5.会議概要

1.平成30年度事業について

事務局より柏市郷土資料展示室の展示企画運営、埋蔵文化財の発掘調査、文化財の調査・研究及び維持・管理の3項目について、配布資料に基づき配布資料報告を行った。また、現在進めている文化財保存活用計画、「房総の牧」日本遺産の申請、柏市文化財整理室屋根・外壁改修工事実施設計、旧手賀教会堂保存修理工事についての概要を報告した。

説明後の意見交換は以下のとおり。

  • 房総の牧について

(椎名会長)房総の牧、これまでどのような会議をおこなってきたのか

(事務局)電話連絡で内諾。現状依頼文をもらった段階。正式参加の予定。酒々井町はすでに文化庁と協議を進めている。

  • 埋蔵文化財調査の現状

(井上委員)埋蔵文化財の調査は厳しい状況でしょうか

(事務局)厳しい状況で、大規模調査に関しては民間の調査機関(JV)、北柏については印旛郡市文化財センターが調査を実施しております。

2.議題 文化財保存地域計画の策定について

「文化財保存地域計画」について資料に沿って事務局より説明を行い、(1)計画策定協議会の設置、(2)事前把握及び調査事業業務、(3)各分野における柏の特徴や特筆される事物、の3項目について、意見交換をおこなった。

(事務局)今回策定する地域計画についてですが、従来の「歴史文化基本構想」を発展させ法律に位置づけされたものです。

この地域計画に基づく取り組みを本市の総合戦略に位置づけることにより、観光振興や産業振興、地域活性化などと連携した総合的な取り組みが可能となります。

これによって、文化庁のみならず、国交省の補助、文化財の保存・活用に対する特別交付税措置などを受けられるようになります。また、地方創生推進交付金が活用可能となるなど、地域計画の策定により多くの財源を得ることが可能となります。

さらに、この計画の策定事業自体も補助対象となっており、本市においても来年度着手するに当たり、これから応募する予定です。

この中で重要な視点は、地域の人々の暮らしの中に埋もれた関連する複数の指定・未指定の文化財群を総合的に捉え、新たな価値を見出し、適切な保護を行っていくという観点です。

結果としては、法的に保護していく文化財の対象は現在と比較にならないほど膨大な量となります。

これらの文化財は社会全体で保存と活用を担っていかなければならず、このために、関連する文化財とその周辺の環境を一体としてとらえ、地域の歴史や文化を示す魅力的なものとして提示し、保護することが必要とされています。

担当課としてはこれらのことから総合的に判断し、来年度から地域計画策定に着手する決断をいたしました。

説明後の意見交換は以下のとおり。

計画策定協議会の設置について

(清藤委員)市全体ですすめるようになっているのか。

(事務局)これから調整となりますが、そのように考えている。

(倉田委員)埋蔵文化財など多くの業務をかかえている。人数が足りない状態。策定できるのか。

(清藤委員)これを機会に文化行政体制作りを考えて欲しい。中核市で博物館がないが、博物館設置のいい機会ではないか

(椎名会長) 里山の団体ネットワークがある。こうした団体にも参加してもらい、策定に協力してもらっても良いのでは

(井上委員)市史編纂も体制に関わる方がよい。

(石野委員)協議会には専門家をいれてもらいたい。地形・地理の専門家など。

事前把握及び調査事業業務について

(石野委員)世田谷区で関わったことがあり、民俗や歴史などそれぞれの部会で1年間10回以上集中協議をおこなった。その際に事務局側よりたたき台になるものが出された。吉田家住宅は空間としてはよく活用されているが、民具については活用されていない。職人などの関係者からの聞き取りをすることで物流などの情報を加味して、もっと吉田家民具の活用の幅をひろげられる。企画展の積み重ねデータも活用すべき。文化財に関する情報の洗い出しが必要。

(倉田委員)文化庁は公開に力を入れている。保存とバランスよく出来るようにしたほうが良い。旧石器時代から現代まで串刺しにしてみていく必要がある。テーマとしては、手賀沼との係わりなどが考えられる。また、牧はこれまで小規模にしか扱ってこられなかった。近世から近代まで大きく扱ってもいいのではないか。松戸では市立博物館開館前にそういう話もあった。建築物の調査は一般の庶民的な民家については扱われていない。昭和の建築も含めて対象としてみてはどうか。

(塩澤委員)各分野で、文化財がどういう状態で存在するのかを把握するための調査作業がウェイトを占めている。例えば美術工芸については柏市ではおこなわれているが、旧沼南では終了していない。

  1. 活用に重点を置くあまり、調査研究を十分にしないで拙速に活用に踏み切ってしまうと、文化財の損壊に繋がる恐れがある。
  2. 策定までの期間の3年は短い。時間がないためにキチンとした情報がない調査になりかねない。リスト化にあたっては調査の精度が大事。
  3. ストーリーを先につくるとのことであるが、基本データの蓄積を経て特色を出す手順。そこはまだ急がない方が良い。

(藤井副会長)1.これまでのものと同じで、飛びつかないと財源の確保が難しい。一方で、しっかりとした調査を実施して調査のストックがないと、綻びがでる。うまく予算を獲得し、失われていく文化財を守る制度を確保することが重要なポイント。2.観光方面に焦点をあてるのではなく、日々の日常生活のなかで、歴史的なものを活かして魅力のある柏を描けるのかが重要である。

(倉田委員)染谷家住宅について民俗資料について調査が必要ではないか。

(事務局)調査が必要であると考えている。

(石野委員) 空き教室に民具を集めている小中学校があると思うが、現状の調査が必要。地域のお祭りなどの把握も必要。

(倉田委員)歴史は自然を視野に入れて描いて欲しい。

(萩原委員)沼南町の鳥ビシャなども調査をおこなって根本をキチンとつかんでいないといけない。

(塩澤委員)沼南町でおこなった仏像調査などは完結していません。やり直すとしたらかなり時間がかかると思います。

(井上委員)もうひとつ、沼南町の民家調査を立教大学でおこなっています。結構資料があると思いますので、それを確認していただければと思います。

(事務局)いろいろ心配いただいた委員の皆様のご意見を取り入れて考えていきたい。また、3年は早急とのご意見もありましたが、3年で完成して終わりではないと考えています。その後、引き続きやっていくべき調査についても計画に盛り込み、継続的に文化財の調査・保存・活用に役立つ計画にしたいと考えている。

各分野における柏の特徴や特筆される事物について

(藤井副会長)一つは旧柏の特徴は急激な都市化で消えてしまっているものが多いが、旧沼南には原風景が残っていること。この対比はかなり魅力的で、大変な財産であり、フィールドミュージアムの大きなポイント。二つ目は様々な分野で横断的・総合的にみていくことで新しい価値がうまれる。旧吉田家住宅が中心となる。建物・庭園・民具の分野からリアルな展示ができれば魅力。

(井上委員)柏北部の調査、とくに今年度刊行の小山台遺跡や駒形遺跡では資料が充実しており、柏の特色につながる。小金牧は、のちに軍事関係の飛行場になるなどその後の歴史へ繋がっている。

(萩原委員)都市化しない部分への注目をしたい。具体的には大室の盆綱、若白毛囃子、東葛印旛大師,間引きの絵馬、原初の様相を残すオビシャ。

(椎名会長)モデルケースである山口県萩市は有名な城下町として2020年に向けて観光地として活用できるように、外国人観光客の増加を期待したものである。観光地としてアピールするものが少ない柏市はどう対応していくか。手賀沼をクローズアップしていくことが良いのではないか。手賀沼周辺の埋蔵文化財は県有数である。また、牧も開拓後戦争に利用されている。手賀沼・埋蔵文化財・牧が核といってよい。

(清藤委員)柏市の特色となる手賀沼周辺の文化財である中馬場遺跡や一番割遺跡をどのように扱っていくか。

(塩澤委員)十分な検討はなされていないので仮説として聞いてほしいが、旧沼南は手賀沼を通じて水運が盛んであり、一方の旧柏は陸路・街道の陸の文化である。旧沼南と旧柏は水と陸の文化の接点で、牧も海や内湾の近くに設置されることが多く、水と切り離すことが出来ない。柏市の特色といえます。

その他

  • コンサルタントの導入について

(塩澤委員)コンサルタントを入れるということであるが、具体的にはどういう仕事を考えているのか

(事務局)事務局で骨子を作成します。事務局だけではできるものではないので、調査の取りまとめ事務、冊子作成事務、策定事務、ワークショップ・シンポジウムの運営事務などをコンサルタントに委託することを考えています。

(塩澤委員)コンサルタントの頼りすぎは危険。過去の経験から「歴史文化基本構想 策定の流れ」にある内容はコンサルタントに任せないほうが良い。新しい分野なのでこの内容に関する経験値をもつわけではないので、今後必要な調査の洗い出し作業はコンサルタントに任せず、事務局で実施するべき。嘱託を雇用するなど有効的な費用の使い方を考えるべきでは。コンサルタントを使うのであれば、慎重に選んだほうが良い。

(井上委員)城の保存公園化でコンサルタントに関わった経験があるが、お手軽にやってしまう印象。

(石野委員)部会の会議にコンサルタントが入ってもらい、内容を良く把握してもらったほうが良い。業者選択は慎重にしてもらいたい。

(倉田委員)コンサルタントは内容はない可能性が高く金太郎飴のようになっていないか。自前で頑張れるのであれば、事務局が頑張るしかない。

4.傍聴人

1人

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