平成22年度 柏市保健衛生審議会母子保健専門分科会第1回会議録

1 開催日時

平成22年10月21日(木曜日)午後2時~午後4時

2 会場

ウェルネス柏4階 大会議室

3 出席者

(委員)12名

小林会長、小松﨑副会長、青木委員、阿部委員、飯塚委員、上別府委員、窪谷委員、小路委員、妹尾委員、布山委員、松井委員、山田委員

(事務局)19名

副市長、保健所長、保健所次長兼総務企画課長、地域健康づくり課長、子ども発達センター長、保健予防課長、教育研究所長、児童育成課、保育課、学校保健課、他関係職員

4 開会

(1) 副市長挨拶
(2) 委嘱状交付
(3) 各委員自己紹介

5 議事

(1) 分科会会長・副会長の選出
(2) 柏市保健衛生審議会母子保健専門分科会の趣旨について
(3) 柏市の母子保健の現状と課題について
(4) その他

<開会>

(1) 副市長挨拶

柏市には子育ての若い世代が多くいる。成長の支援、家庭での養育、虐待防止等、様々な観点での母子保健の支援が必要である。
市ではそれらを支援するために、母子保健ガイドラインを策定したいと考えている。
委員の皆様にはそれぞれの立場から忌憚のない意見をお願いしたい。

(2) 委嘱状交付

保健所長による委員紹介

(3) 諮問

副市長による諮問の読み上げ

<議事>

(1)分科会会長・副会長の選出

(2)審議

会長)母子保健ガイドラインを策定するにあたり忌憚のない意見を伺うこととなっている。議事の(2)と(3)について事務局から説明を願いたい。

事務局より説明

会長)資料が多く、全体像をつかむのが大変だったと思う。委員の皆様には、現場からのご意見等忌憚のない意見を伺いたい。対象はどこからどこまでを考えているか。妊産婦から小学校入学くらいまでと考えてよろしいか。

事務局)妊産婦から小学校入学くらいに絞りたいと考えているが、教育部門の方にも来ていただき、乳幼児期から思春期につなげるためのご意見等をいただきたい。

【各委員の意見】

会長)妊産婦、乳幼児、子育て、子ども自身の問題。ガイドラインで取り扱う点がかなり広範囲である。委員の皆さんから一言ずつ意見をいただきたい

委員)範囲が広く、どこに焦点を当てるか自分の中ではまとまっていない。私は精神科外来を中心とした臨床を行っている。妊娠中の母親が外来にくることがよくある。母親が精神疾患を抱えている場合、妊娠・出産・育児が難しくなる。子どもだけでなく、母親のことも考慮に入れてもらいたい。

会長)産後うつスクリーニングのEPDSというのはかなり信頼度が高いものなのか。

委員)産後うつスクリーニングツールとして世界的に使われている。こちらで使用するのも望ましいと思う。

会長)小学校に入るまでという範囲が母子保健の中心になると思うが、それまでの問題点があればお教え願いたい。

委員)学校を預かる立場から、家庭の教育力が落ちている前に子育て力が落ちているということを感じる。情報化社会の中、子どものコミュニケーション能力も落ちている。発達障害のような子どもも気になる。乳幼児期からの子どもの関わり方が大切である。これからの日本を背負う子どもたちをきちんと育てていきたい。

会長)育児に関係することを扱われている立場から感じていることなどをお話しいただきたい。

委員)商業というどちらかというとアクティブな人が来店している視点から現場の声を聞いてきた。月1回保健師による相談会を実施しており、40名ほどの20代から30代の参加がある。その中では妊婦の相談が一番多い。常識で知っていると思っているようなレベルのことを知らなかったりする。まわりに聞ける環境ではないのかもしれない。

相談内容では、食物アレルギーに関する不安が多い。何かできればと思っている。

疾病等を抱えている方と接する機会は少ない。

また、買い物が大変であるという話も多いため、店舗周辺半径2~3キロ範囲は買い物についての補助を行っているが、対象地域は狭い状況である。祖父母もいなく需要はあると聞いている。どういう事業ができるかということも議論いただきたい。

委員)虐待予防について研究をしている。子育てが大変になっており虐待が起こる前に予防したい。妊娠期からの研究・啓発に努めている。柏市では母子健康手帳交付時から力を入れているということや、EPDSを使って気にかかる事例への支援という、専門職種の判断・感性を大切にした取り組みをしていること、専門職と柏市民健康づくり推進員が力を合わせて行っていることを伺い、よくやっていると感心している。

ネットワークを整備し、みんなで盛り上げていかねばならない。現状として医療機関との連携がどうなっているか伺いたいと思っている。

委員)広い範囲だと思うが、妊産婦の頃から虐待という視点で地域とどう関わっていくかが重要と感じている。できれば妊産婦の頃からリスクがないか把握していくことが求められる。これからどうしていくか新しい視点で考える必要がある。

産後うつのリスクスコアのほかに、妊婦の初期のリスク問診票もある。点数化して周産期医療センターに紹介することになるが、問題として中核病院に患者が殺到してしまうため、本当にリスクの高い患者を見ることができなくなる。効率的に本当にリスクが高いものを見ていくことが重要である。リスクが高くても医療機関が見られない状況になっている。

今大切なのは連携をとっていくこと。柏には周産期医療センターもないため、より一層の連携が必要である。この会議でよい形に発展してもらいたい。

委員)助産師会は病院や地域での活動、小中学校での性教育にも関わっている。最近はハイリスクの妊婦が増えていると感じる。

お互いの信頼関係ができる前に赤ちゃんを授かるため、生まれる頃には関係が終わってしまうケースも多い。また経済的な問題や信頼関係など大きなリスクを抱えている場合も多い。

EPDSでは一見大丈夫と見えた方が実はハイリスクというケースもあり、見た目ではわからないリスクがあることを感じている。

医療機関、保健所、助産師、柏市民健康づくり推進員等の連携を深めることが非常に大事と思う。

親が働くことや生きることに精一杯の家庭では、小学生が小さい子どもの面倒を見ている場合もある。さみしい思いをしていることから子どもの性行動が早まるという悪循環を起こすこともある。思春期の教育が母子保健に大きく関わっていると感じている。

委員)柏市民健康づくり推進員は20地域・約400人が子育て支援、虐待予防等の活動を行っている。こんにちは赤ちゃん訪問では訪問しても会えない場合が1割ぐらいいる。

地区社会福祉協議会では子育てサロンを行っており、民生委員、柏市民健康づくり推進員、ボランティア等色々な人の関わりで進めている。最近は親の気持ちになる前に妊娠してしまうことが多く、子育ては大変になっていると感じている。推進員研修会を開催し地域での子育て支援体制を充実させている。みなさんの協力を得て今後も取り組んでいきたい。

委員)当院では、精神疾患や内科疾患、社会的な問題、若年妊婦などハイリスク妊産婦のお産が年に何例かある。当院のソーシャルワーカーと患者が相談し柏市の専門職と連絡を取りながら進めている。情報を共有する場所があり、どこに情報を発信するかわかるシステムづくりがよりスムーズな連携に結びつくと思う。子育て支援について小児科でできることを考えていきたい。

委員)自分の立ち位置はどこにあるかと考え出席した。自分は自閉症の子どもや成人の支援をしている事業所の代表をしている。昨年度の審議会では発達障害について議論をさせてもらった。

母子保健のガイドラインができるのであれば、支援者サイドだけでなく利用者サイドが使いやすいものになればよい。支援者ならネットワークや連携の視点になるが、親から見ればわかりやすく、困った時のSOSをキャッチできるしくみが柱になると思う。

2~3歳からの就学までの療育事業を行なっている。事業を開始して80組ほどの支援を行っており、現在は関わり方を見直し中。5年前と子育て状況が随分違ってきている。もっときめ細かくてもいいのではと思う。

母親の意識の変化とか、幼稚園・保育園の変化などさまざまなことが変化している。現状を見てどうするかを議論しなければならない。子どもを育てる力や関わり方が乏しいと感じている。母子分離ではなく、母子を一緒に支援していくことが必要であり、個々の背景を見ていくのが重要である。具体的なことを加えるとガイドラインも肉付けされると思う。

委員)現在の子育て世代として参加させてもらっている。

35歳で双子を産んだ。ハイリスク、初産、高齢出産というパターンだった。当時柏市に助けを求めたとき、ろくに相談できずに電話が切れた。柏市は何もやってくれないのかと思っていたが、今回の資料を読み、いろいろやっていたのがよく分かった。

必要なときに必要なところに情報が届いていないと感じる。SOSを発信したときに、キャッチして情報を的確に伝えてもらえたらよかったと思う。手元に情報が届いていないため、利用する方に幅広くわかりやすく伝えることができたらいいと思う。

委員)今回は母子関係の妊娠・出産・子育てに重きを置くということでいいか。健康福祉審議会に児童健康福祉専門分科会というのがあるが、これとのスタンスの違いは何か。柏市で本当に支援を求めている方がどのくらいいるのか。

範囲が広すぎるため、重点を決めて行う必要がある。

虐待予防なのか、子育ての支援なのか明確にしないと大変ではないか。地域性によっても支援が違う。

医師会でも地域健康づくり課とタイアップして地域健康講座を行っているが、地域性に合わせる必要がある。現在実施している事には無駄が多いと感じる。医師の配置など効果のあるやり方をお願いしたい。

また今回のガイドライン作成にあたり、幼稚園関係者がいないのはなぜか。柏の開業医で小児科専門は14医院しかない。育児を盛り込んでの診療はなかなか難しい。

教育職のOBのボランティアによるシステムづくりができないか。医師の視点とはまた違うものができると思う。

会長)健康福祉審議会児童福祉分科会と重なる点があると思う。保健所は出産から小学校入学くらいまで、健康福祉審議会では小学校入学からという形で基本的に考えているがそれでよいか。

事務局(児童育成課)健康福祉審議会児童福祉分科会は、0歳から18歳まで福祉的、児童の健全育成の視点で昨年度次世代育成支援行動計画を策定し、その進ちょくを管理することをメインに活動している。乳幼児の親子の課題で児童虐待等は重なるところがあると思う。

事務局)児童虐待の所管は児童育成課になっているが、保健所は妊娠届出から始まる医療との関わりを所管している。妊娠から出産・特に乳幼児のことを中心的に審議していただき、まとめていきたいと考えている。児童育成、教育、保育など福祉分野については次回の分科会で連携など話していきたい。

事務局)委員の話にあった医療との連携について現状説明させていただく。対象者の状況に応じて児童育成課等関係部署と連携して対応している。市内の産婦人科医院や、市内に関わらず総合病院から連絡が来る場合がある。

最近の医療機関との連携事例としては出産した母親が自分の子どもを見たくない、おっぱいを吸われて気持ち悪い、自分だけ帰りたいというSOSがあり、保健所職員が児童育成課職員と協力して訪問し、話を傾聴することから始めた。

母親は産院を退院後に精神科に入院したり、いろいろな健康課題があったが、現在は在宅でなんとか子どもを見ている状況にある。医療機関から保健所へタイムリーに連絡をもらうことが多い。

極端な例ではあるが、医療機関からの連絡で出産費用がない妊婦の受診というのがある。医師、助産師、ケースワーカーからも連絡をもらっている。

最近は虐待を疑う事例として頭部外傷で入院して亀裂骨折、血腫があるという連絡が総合病院から10月に2例ほど入っている。共に児童相談所へも通報しており、まだ虐待と認識して支援がスタートしているわけではなく、疑いつつ母子保健分野として共に支援している。

未熟児で生まれた場合には、病院からの情報提供により、家庭訪問で支援している。

14回の妊婦一般健康診査受診券は全額公費負担ではないため、お金がないという理由で受診しないという妊婦もいる。

またメンタルヘルスで支援が必要な母親の場合は、出産病院を一緒に探したり、退院後は病院と連携して支援をしている状況である。特に未熟児で2、000グラム以下の虚弱で生まれた場合は継続して支援している。

委員)健康講座は、柏市民健康づくり推進員が医師会の先生にお願いして、各近隣センターで地域の方を対象に子育ての話や健康づくりの話をしていただいている。

妊婦健診については、お母さんたちは妊婦健診は無料と思っているため、14回の助成制度はあるが金額が高く、なかなか行けない人もいる。

会長)こども発達センターと子育て支援は別なのか

事務局)(子ども発達支援センター長)こども発達センターでは、障害児の通園施設と発達障害児に対する相談、療育を行っている。健康な子は扱っていない。

会長)柏市における母子の健康問題をどのように組織としてつなげていけるか。子育てしているお母さんがわかりやすく説明でき、気軽に情報が得られるようなガイドラインを作ることが重要ではないか。問題を解決できるような具体的なガイドラインが必要。

委員)妊産婦の話に戻る。私も委員がおっしゃっていた、柏市は何もやってくれなかったという思いが昔はあった。今は変わってきており、助産師会や保健所保健師が積極的に動いてくれるようになり、連携がよくなってきていると感じている。さらに発展させていただきたい。

同様にハイリスク者が増えている。重症な精神疾患を持っている場合、よりハイリスクなレベルになると完全に医療の話になると思う。全体の傾向としては昔に比べてよくなっている。

会長)慈恵医大柏病院に入院施設を作るという話は昔あったが、いろいろな規制があって結局はできなかったという経緯がある。近隣との施設との連携で対応している。里帰り出産だと、その先がわからなくなるといった資料があったが里帰りの比率などはどうなっているのか。

事務局)里帰り出産数の実態は把握しきれていない。平成21年度は出生は3、535件、新生児訪問は1、471件。約46.1%の利用だが、他市の人を柏市に依頼されて行なう場合もある。柏市民を相手先の市町村に依頼をして行なう場合もある。他市とは依頼文のやりとりで把握している件数はあるが、総数とはいえない。

委員)母子健康手帳を配布する際や出産までのあいだの市のアプローチはどのようなものがあるか。母子健康手帳を発行してハイリスクの妊婦に対し何ができるか、何か考えがあれば教えていただきたい。

事務局)母子手帳を交付する際に保健師が対応しているのは約半数で市役所母子保健コーナー及び沼南支所で対応している。他は各出張所(特に柏駅前行政サービスセンター)で配布しているが、保健師のマンパワーの関係で、出張所職員に母子健康手帳の交付を依頼している。

妊娠届出時の週数が30週を超える場合はすぐに保健所に電話してもらうよう伝えており、連絡があれば、直ちに保健師が支援できるようにしている。保健師が面接できない出張所等では、ハイリスク妊婦の背景の詳細を把握することは難しいが、保健師が面接した妊婦はマニュアルに沿ってリスクを判断し、ハイリスクの場合は地域担当保健師が家庭訪問等で支援を開始している。妊娠中に訪問、アプローチをする事で関係づくりをしている。

健康づくり推進員の妊婦声かけ訪問からも連絡があり、気になるケースは保健師から必ず連絡を取っている。

会長)取り扱う範囲が広いため、どこかに重点を絞りたいと副会長から話があった。広範囲のたたき台といったガイドラインを作成した後、重点を絞り相談していくしかないのではないか。

副会長)中核市になって柏市としてこの分野でガイドラインを作るのは初めてと伺った。そのため、広範囲で作ってもいいと思う。

会長)今回は現状についての詳細な資料をいただき、委員それぞれの立場から話をしていただいた。次回に向かってなんらかの提言等あれば追加でお願いしたい。

委員)妊産婦から健全な母子愛着形成のためには乳幼児期があり、さらには広く思春期等があると思うが、市民が分かりやすくという点で考えると、やはり多少対象を絞った方がいいと思う。妊婦や乳幼児を持つ母親へのメッセージのほうが保健所から発信する情報としては明確になると思う。

会長)健康福祉審議会は広範囲だが、保健所として扱うのは出産から保育くらいまでが対象と考えられる。

事務局)母子保健としての中心はそのとおり。妊娠から出産、特に乳幼児を持つくらいの世代の人生の出発点を母子保健が担当している。情報を得たり、支援者との関係づくりができ、サービスを利用しようと思ってもらえれば、成長に応じた相談を必要なとき早期に利用しようと思ってもらえ、ふさわしい案内ができると思う。

委員)ガイドラインの実現とあるが、前年度の専門部会では発達障害の課題について話した。早期発見も大切だが集団になってからの活動が重要と認識している。今回のガイドラインにも、その集団である幼稚園や保育園の内容を入れてもらいたい。

先進事例があり次回までにご紹介いただければ勉強したいと思う。(柏市が目指す要素が入っている先進事例。)

課長)東京都や神奈川県の事例がある。

会長)まずは、たたき台をつくるということで進める。その後、ガイドラインを策定ということになる。

所長)かつての柏市の対応がよくなかったのではないかという話があった。中核市以前の柏は県と市の二元構造となっていた。そのころは疾患や障害のある子どもやハイリスクの母親への支援等は県の保健所であった。現在は、中核市となり行政の二元構造がなくなり、よりよい方向へ向かっていると思う。今後ともご意見をお願いしたい。