平成22年度第2回柏市環境審議会生きもの多様性部会会議録
1 開催日時
平成22年8月30日(月曜日) 午後2時~3時40分
2 開催場所
柏市教育福祉会館2階 大会議室
3 出席者
委員
野村部会長、日野原副部会長、大木委員、大島委員、熊田委員、山口委員、鈴木委員、佐々木委員、森委員、柄澤委員
事務局
金子環境保全課長、中山副参事、高橋主幹、海老原副主幹、成島主事補
4 議題
(1)生きもの多様性プランの基本的考え方
(2)生きもの多様性プランの将来像と基本方針
(3)その他
5 議事(要旨)
事務局から説明を行った後、委員からの質問、意見があった。
(・は委員からの質問、意見、要望)
(⇒は事務局の回答)
(1)生きもの多様性プランの基本的考え方について
<委員>
・計画期間が2050年までとなっているが、市の計画としてなじむのか?国家戦略の計画期間に合わせたものと理解するが、国は大規模な自然改変を含む施策を念頭に置いて期間を設定していると思われる。市としてはまずは身近な生物多様性の損失に対する歯止めが大事。2050年を最終年度とするにせよ、当面今からできることに重きを置けるように、短期的な期間に軸足を定めることが望ましい。
<委員>
・私も上記委員と同意見で、期間設定が遠すぎないかと考える。また。施策を実行する際は重点地区を絞ってやる必要があると思う。
⇒計画期間については、基本的施策は2025年を目標に、重点的施策は2015年、最終目標は2050年と考えている。重点的な施策を実行していくということについては、事務局も同じ考えを持っている。
(2)生きもの多様性プランの将来像と基本方針について
<委員>
・基本方針の「情報の蓄積と知識の普及啓発」「生きものの生息・生育環境を保全する仕組みづくり」の考え方については、当面の課題として取組むことが大事。将来像に盛り込みたい。
<委員>
・将来像について。「杜」よりも「谷津」と言う言葉のほうが良いのではないか。「下総台地と谷津」はどうか。
<委員>
・これは将来像というより、「理念」ではないか。将来像というのであれば、もっと具体的なイメージのわくキャッチコピーを使ってわかりやすく市民に訴える構成にした方がよい。
<部会長>
・まず、今の将来像を理念として、具体的な言葉(生きものの名前、地名等)で「姿」を示した方がよい。
<委員>
・将来像に、具体的な(保全していきたい)生き物の名前を使ったらどうか?柏にかつてはいたけれど、今はもういない象徴的な生き物とか。
<委員>
・将来像に含まれる「杜」という言葉は社寺林のようなイメージ。もっと考えた方がよい。ただし、具体的な生きものの名前を使うと、その生きものばかりがクローズアップされる可能性があり、その後の施策の展開が制約されてしまうことも考える必要がある。
<委員>
・具体的なわかりやすい、生きものの名前などを将来像に入れていかないと、市民に分かりやすいものにはならないと考える。生態系の上位に立つ生物(アンブレラ・スピーシーズ)を象徴的に保護することによって、多様性の維持・回復につなげていくという考え方があるが、その実践事例は参考になるはず。
<部会長>
・私もわかりやすい市民とへだたりが出ないようなフレーズを将来像に入れることに賛成。しかし、象徴的なものを強調するのは好ましくないと考える。
<委員>
・将来像に象徴的なものを強調するのは、時代にそぐわないのではないか。柏全体の生態系に目を向けるべき。
<委員>
・生物多様性が柏の価値を高めるようなプラン作り。市民を引きつけるためには、インパクトのある将来像にしたい。
<委員>
・まず、施策の重点を示し、そして象徴的なもの掲げることにしたらどうか。
<委員>
・基本方針については、希少種が強調されすぎているような感じがする。一般的な生物の多様性に施策としての配慮がほしい。
<部会長>
・希少種(象徴的な生き物)だけでなく、生きもの多様性全般に対する配慮は重要だと考える。
<委員>
・希少種を残そうとするだけでは希少種は残らない。ホタルをよそからもってきて入れればよいというものでもない。その周囲の環境や生態系のまとまりを残さないと希少種の保全はできない。時間をかけて見続けていく必要がある。
<委員>
・希少種を残すことが先決。今あるものを失くさない。目立たないものを失くさない。原生林ではなく、人の手が入った林を大切に。森の中を上手に維持管理していく必要がある。そのための行政支援は。
⇒希少種は変化に弱い。もともと生態系が豊かであれば希少種も残るはず。健全な森を残していきたい。
(3)生きもの多様性プランの基本的考え方について(その2)
<委員>
・「市民等」とは、なにを指しているのか。
⇒NPO等の市民団体を含む。市外から柏市を訪れる来街者も「市民等」に含めたい。
<委員>
・「生きもの多様性」は「生物多様性」でよいのではないか。生物多様性は国際的な公式用語であるし、何より環境問題を構成する重要な概念として、すでに一般市民や企業に広く定着していると思われる。逆に、同じことを柏市が別の言葉を使用して表現するのは、無用な混乱を招くのでは。
<委員>
・「生きもの多様性」はさわりやすい(柔らかい)表現である。わかりやすいので、この表現でよいのではないか。
⇒「生きもの多様性」という表現について。親しみがもてる。市民にわかりやすい表現でいきたい。
<委員>
・「事業者」という表現の中に「地権者」は入るのか。生態系の保全を考えるときに「地権者」との関係が重要であるはずだ。地権者の位置づけを明確にしたほうがよい。
<委員>
・協働イメージの図について。土地の使用者、地権者はどこに含まれる。
<委員>
・地権者は事業者に入るのでは。
<委員>
・開発を防止することだけがプランではない。どう維持管理していくかが大切。土地の所有者の協力は大事。
・農家の人との協働にあっては、地権者の同意が必要。この認識は大事なこと。
<委員>
・里山の保全には地権者が重要である。また、「事業者」とはビジネスとして「生きもの多様性」保全に関係する事業に取り組む者のことか?
<副部会長>
・協働のもとでは「事業者」は、生きもの多様性保全に関わる活動を構成するメンバーの一員と思っていた。
⇒地権者は「市民等」に含まざるを得ないものと考える。協働を構成する一員として、引き続きその位置づけは考えてみたい。
(4)生きもの多様性プランの将来像と基本方針について(その2)
<部会長>
・将来像に含まれる「杜」という言葉はどうか。
<委員>
・柏市の自然の特徴は「下総台地」と低地部にある「谷津」そして「水辺」にあると思うので、これらの言葉を使ったらどうか。
<委員>
・「杜」はわかりにくいので、「森」という言葉を使ったらどうか。
<委員>
・「杜」はピンとこない。
<委員>
・「谷津」という言葉は一般的な言葉なのか。
⇒千葉県内では一般的な言葉と捉えている。
<委員>
・千葉県では「台地と低地の間にできる斜面林を伴う谷状の地形」を「谷津」と言っている。これは柏市のみの独特の地形というわけではないが、斜面林と農地が組み合わさった典型的な自然である。
<委員>
・柏市の「生きもの多様性」を考える場合、この「谷津」は多くの生きものが集まる場所でもあるので、計画の前面に出していきたい。
<委員>
・「下総台地」という言葉を入れてはどうか。
<委員>
・「下総台地」が指す範囲は非常に広いので、柏市の計画で市の特徴を示すものとして使うのは適切かどうか考える必要がある。
<委員>
・「下総台地」にするか、「北総台地」にするか。
<委員>
・柏市は水辺が特徴的だと思うので、「水辺」を大事にしていきたい。
<委員>
・「水辺」だけを強調するのはいかがかと思う。「台地」や「谷津」も取り上げてほしい。斜面林、谷津、湿地、湧水(こんぶくろ池)、こういった環境が特徴的。
・谷津や台地を積極的に取り上げるというのであれば、それらが単にこの地域の地形上の特色を表しているというのだけではなく、どのようにそこの生態系の特徴に反映されているのかという議論が必要。たとえば、谷津という言葉は地域性を表現するのにはいいが、谷津が斜面林と田んぼを含む湿地帯との複合体とすると、生態系からみれば、「水辺」と「杜」という概念で済むことにならないか。一般には、ある植物の生育環境について湿地だとか林縁だとか言うが、谷津であるという言い方は聞かない。台地も同様。
(5)「柏市民が選んだ護りたい里山の植物、護りたい生き物・動物編」<案>について
(佐々木委員、森委員から「柏版レッドデータリスト」と言うべき「柏市民が選んだ護りたい里山の植物、護りたい生き物・動物編」<案>についての説明)
<委員>
・この植物編のリストは、柏市において「人里の生きもの」(保全を必要とする種)を明らかにする必要があると考えて独自に選んだもの。暫定的なものである。市民に親しみのある植物が選ばれていると考えている。
<委員>
・動物編のリストも柏市において減りつつある大事にしたい種をあげた。動物編も暫定的なもの。動物は動くもの相手、出会いの頻度に差があり、地域的な偏りも大きい。今後もほ乳類、水生動物の追加など見直していくつもりである。
<委員>
・このリストについては、もう少し増やしていきたい。ただし柏市自然環境調査の報告書に生息情報を明確に記載できない情報もある。オオタカの情報もあるのだが、それらの情報を明らかにすると、密猟や写真撮影等の対象となりそれらの生きものの生息に影響が生じる可能性がある。
<委員>
・このリストは、柏版のレッドデータということか。柏市固有の事情を踏まえたリストをつくる意義はあるが、リスト化に際しては、多様性保全を目的とする以上、他の生き物との直接・間接の相互作用に対する配慮が不可欠。保護する対象の間の相互関係が見えないと、施策の重点対象があれもこれも、と言う状況になってしまう。また、国や県のレッドデータとの整合はどう扱っていくのか。
<委員>
・レッドデータリスト化すれば、今後継続的な調査を行うことで、生息情報の経年変化を蓄積できる。また、リスト化することで、市民の方の生きもの多様性に対する理解や関心が高まると考えている。それがリスト化の目的である。このリストは市民の調査員が調査し、リスト化している。大学や研究期間の専門家がやれば、より良いものができると思うが、時間が相当かかり、その間にも保全を要する種には危機が迫っている。それらのことから、柏市自然環境調査に参加した我々がリスト化した。
<委員>
・市民への理解、子ども達の活動への関心や参加をうながす面を考えた。リスト化のアピール効果を期待している。ホットポイントに行ってみてもらう等、親しみやすいものを選んでいる。
<部会長>
・リストの内容は、これで決定ということではないということですね。また公表することに意義があるということですね。
⇒市としては重点地区や保全を考える際のデータベースとして情報を公開していきたい、と考えている。
(6)その他について
<委員>
・これらの計画については市民への普及、啓発が大切である。現在、大手の企業では、生物多様性の保全を企業価値向上ととらえており、その一例としてITを活用した分布調査がある。柏市でも、一般の市民による携帯電話などの画像投稿などで生きもの多様性について関心を持ってもらうことを啓発したらどうか。予算措置が必要となるが、柏市がウェブサイトを立ち上げそれらの投稿画像や情報の公開サイトを設ける。結果として、そこに生きものの生息についてのデータベースができることにもなるのではないか、と思う。
<委員>
・実際、自然環境調査に携わったものからすると、自然環境調査はかなりの時間と経験を要すもので、単なる投稿情報では情報の正確性が不足して、データベース化は難しい、と感じる。
<委員>
・私も同様。情報の精度確保や運営のノウハウについて手間がかかりそう。
<委員>
・いくら立派な報告書でも、それをただ積んでおくだけでは、ごく一部の愛好家の関心は惹いても一般の目を向かせることは難しい。それではあえて行政がプランを練る意義がない。情報は行政と市民との間で双方向であるということが重要。生きもの多様性について広く市民に関心を持ってもらい、行政もまたそれを活かすという方法として、身近な携帯電話などを使った画像等の情報投稿という仕組みは使えるのではないか。こうした取り組み事例や手法を調べてほしい。
⇒環境省による生きものめっけ事業での経過。市民が投稿する情報によるデータベースのようなものも、投稿する生きものについての専門的な情報をかなりの精度で調べてからでないと、投稿しても他の投稿者からおしかりを受けるようなことも起きている。受け入れ側の準備も含め投稿情報によるデータベース化はかなり難しいと思われる。
(7)フットパスについて
(フットパスの事例についての説明)
<委員>
・フットパスは豊かな自然の残っている私有地を通らせてもらう、と言うことがポイントである。
(8)総括
<部会長>
・将来像、基本方針について、本日の意見を考慮して修正してほしい。
6 次回開催日時
9月30日午後2時からを予定とする。
傍聴者 一名
- 柏市環境審議会 第2回 生きもの多様性プラン策定部会次第
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- 資料-1
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- 資料-2
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- 柏市民が選んだ 護りたい里山の植物(案)
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- 柏の護りたい生き物・動物編(案)
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