平成22年度第1回柏市環境審議会生きもの多様性部会会議録
1 開催日時
平成22年7月30日(金曜日) 午後2時~4時
2 開催場所
柏市教育福祉会館2階 大会議室
3 出席者
委員
野村委員、大木委員、大島委員、熊田委員、山口委員、鈴木委員、佐々木委員、森委員、日野原委員、柄澤委員
事務局
橋本環境部長、金子環境保全課長、中山副参事、高橋主幹、海老原副主幹、成島主事補
4 委任状交付
新委員に委嘱状を交付
5 部会長・副部会長の選出
委員の互選により、会長に野村委員、副会長に日野原委員が選出された。
6 議題
(1)プランの背景について
(2)プランの位置づけについて
(3)現状と課題について
(4)総括
7 議事(要旨)
事務局から説明を行った後、委員からの質問、意見があった。
(1)プランの背景について
<委員>
・様々な利害衝突があるが、部会の場においてみんなで調整し、プランにふさわしい理念を見つけていかなければならない。
<委員>
・プラン策定では、環境経済的なメリットを考慮する必要がある。普段の生活に結びつけられるようなわかりやすい目標を提示しながら市民に理解してもらう必要がある。単に「生物多様性が重要」では市民は理解も行動もできないと思う。また柏市においては多様性をどう捉えていくか。
=事務局=
・現状で柏市には手賀沼はじめ豊かな水辺とともに多様な種が存在している。自然環境調査の結果を市民と共有しつつ自然との共生を目指していきたい。
<委員>
・現実には都市間では経済的な競争をしている。柏市が生物多様性に取り組むことによって、他市にはない柏の魅力を発信できるようになる可能性がある。柏の特色を活かした施策を実行し、柏の都市としての価値を高めていくという発想が大切。
=事務局=
・たしかに生物多様性と言う概念は難しい。地球温暖化の問題も含めて「生物多様性」を取り巻く危機感や重要性を市民に伝え、理解を深めていく必要がある。プランを通して柏の市民にわかりやすく方向性を明示していきたい。
(2)プランの位置づけについて
<委員>
・このプランは議会承認を求めるのか。
=事務局=
・議会承認は必要としないが、報告する。この審議会は、市の付属機関で、政策の内容を検討していただく場であり、市の政策を計画として位置づけていく役割をもっている。
<委員>
・環境基本計画、緑の基本計画等では数値目標があるが、この計画の目標がどこあるのか?あえてプランを策定する目的は。
=事務局=
・市の総合計画はじめ関連する諸計画と内容的に整合させる必要がある。また、国の施策との整合や市民協働での3年間の基礎調査の成果を活かし先進的に取り組みたい。
<委員>
・これまでの自然環境調査の成果をまとめて、計画内容に反映させていこうとしていると言うことでよいか。
=事務局=
・自然環境調査で得られたホットポイントや市民要望の課題・提案をどう位置づけ、どう実現するかを考えていく。
<委員>
・保全とは、回復とは何か?100年前と同じにすることか?、しかしそれでは現実とは合わない。「生きもの多様性の保全」の意味を明確にすることが必要である。
<委員>
・国家戦略は長期目標だから「維持・回復」と言う言葉を使っているが、例えば悪化していくのを止める、悪化に歯止めがかかっている、回復するなど色々と段階がある。この計画では用語を明確に使った方がよい。
<部会長>
・この計画では、希少種の保全が目的なのか、生物多様性の維持、復元が目的なのか?
=事務局=
・元に戻すのではなく、様々な生態系が復元できる環境を保全、再生していくこと、そのための適正な管理を目的として施策が展開されることを前提としたい。
<委員>
・市が示すプランの方向性では、希少種の保全に力点が置かれているように感じる。
<委員>
・自然環境調査に関わった経験を踏まえ、柏市の貴重な自然を残すことは難しい。しかし、努力してその希少種はじめ貴重な自然を残してほしい。この計画の目的は、その保全のためのシステムの提案・検討でよいか。
=事務局=
・プランの位置づけや柏市の地域特性を踏まえつつ、資料のp.3に示したプランの構成と検討プロセスのもと計画をまとめたい。その結果を反映した施策にもとづいて予算措置をし、実行していきたい。
<委員>
・印刷部数は?他の個別計画との調整はどのようにするのか?結果はどのように公表するのか?
=事務局=
・上位計画である総合計画のエキスは取り込みたい。それを踏まえて他の個別計画とは庁内関係課と協議し,整合を図りたい。
=事務局=
・資料のp.3に示した検討のプロセスのもと、策定段階では,案の段階でパブリックコメントを行うとともに、計画書を公表する。
<委員>
・広く市民が分かるような公表の仕方(リーフレットやインターネット利用など)を検討してほしい。マスコットキャラクターの利用や環境配慮が行われたことに対してポイント還元を考えるなど成果を可視化する工夫も必要である。
<委員>
・本計画の内容はすでに策定された個別計画の内容に制約を受けるのか?
=事務局=
・まずは上位計画である総合計画の方向性を受けて本プランに反映させていく必要がある。その後個別計画についても本プランの策定に合わせ見直しの必要性を確認していきたい。
<委員>
・千葉県戦略との関係は?
=事務局=
・同じ種類の計画でも国や県と市町村では取り扱う「ふるいの目」が違うと考えてほしい。ただし方向性は同じ。
<委員>
・定量的な目標を持つ計画となるのか?
=事務局=
・様々な施策の進捗を管理、調整していく計画と保全に向けた仕組みづくりの方向を示すような計画にしたい。
<委員>
・5年ごとに計画の見直しはするのか?
=事務局=
・上位計画の進化に応じて、本プランもよりよいものとなるよう進化させていく。
<委員>
・他の個別計画は、どれも総花的で立派だが、現実は実行できていない。年々自然は失われている。この計画も総花的な計画になるかと思うと心配。具体的な施策を絞り込んで検討していきたい。
<委員>
・資料にあるように、いくつかの重点的な施策や行動計画に絞った方がよい。
<部会長>
・いくつかの重点施策を絞り込んだ方がよい。
<委員>
・具体的にわかりやすく、絞り込みをやってもらいたい。総花的ではわかりにくい。
(3)現状と課題について
<委員>
・手賀沼周辺の農薬空中散布は生物多様性の保全に対する考え方と相反する。その補完施策を考えてほしい。
<委員>
・周辺の自治体ではすでに空中散布はやめている。農家の間でも害虫対策をどうするか議論になっている。また斜面林の維持は非常に困難で、その理由は相続の発生にある。さらに冬場、斜面林は農地に日陰を作って農産物の生産に影響がある。
・もし、農薬をやめて、害虫が発生したらどうなるのかを考えると農薬の散布をやめることができない。
<委員>
・生物多様性について言えば、柏市は多様であると思う。また遺伝子レベル(地域個体群)の多様性も重要だと考える。さらに環境保全とは「放置すること」ではない。里山における「生物多様性」を維持するためには人手が必要だし、刈り込みのような行為においても時期や加減を考慮する必要がある。環境経済的な面から言うと、「生態系サービス」は大変な額になるであろう。こうしたことを考えていく上からもこの計画の策定意義はある。
<委員>
・また柏市の場合、上流の谷津田を含め水辺が重要であり、水辺に絞って施策を出した方がよいと考える。資料で提案されたエリア分けは流域に着目したもので、これは良いと思う。柏市の農業にも触れてほしい。
<委員>
・水辺に着目することに賛成する。またイギリスの「ナショナルトラスト」や「フットパス」のようなことも考えてほしい。
=事務局=
・様々な方策があるがなかなかうまくいっていない。施策の実行に時間がかかっていると相続で緑地が宅地化してしまい、施策が頓挫しているのが現状。相続税の猶予を国にお願いしている。重要な緑地の行政への「貸与」というのを考えてほしいと思っている。緑の基本計画と協調して、重要な緑地を選び、残す方策を考える必要がある。
<委員>
・市民を巻き込むためには生物多様性対策や温暖化対策は、結局人間に帰ってくるものだという視点で説明していくとよい。
<副部会長>
・沼南地区では、人口減少で地域社会が成り立たない状況もあり、社会を守るためには住んでいる人が増えることが必要な地区もある。
緑の基本計画の策定に関わるなかで、この計画と連係し、全部を保全するのではなく、ホットポイントなどに着目して計画を立てるべき。
<委員>
・生物多様性と経済性の問題から、「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」の視点を取り入れ、生物多様性において何かした場合と何もしない場合の環境経済的なデータを示せないか。計量的な結果を出すのは困難だとしても、少なくとも考え方は重要。また、「生態系サービスの支払い制度(PES)」、「生物多様性オフセット」などさまざまな制度が考案されてきているので、事例を踏まえつつ検討してみるべき。
<委員>
・農業は生物多様性を考える上で密接であり、耕作放棄地の「復田」が重要である。
<委員>
・生物多様性に配慮した農産物をブランド化し、付加価値をつけるとよい。
<委員>
・水路を昔のような状況にすれば、生物多様性にはよいが、維持が困難となる。
(4)総括
<部会長>
・市民が責任や価値、利益等を分け合っていくものになっていけばよい。
=事務局=
・環境経済的な話は分かりやすいとは思うが、策定は難しい。「生物多様性に資する土地に対する支援」の法律ができるので期待している。
8 次回開催日時
8月30日とする。