平成30年度第2回柏市自殺予防対策連絡会議会議録
1 開催日時
平成30年11月8日(木曜日)午後2時から3時45分まで
2 開催場所
ウェルネス柏4階 研修室
3 出席者
- 委員委員(17人、うち代理出席2人)
宮島委員【議長】、竹内委員、長瀬委員、清水委員、小池委員、伏野委員、橘委員、曽波氏(白田委員代理)、加藤委員、中村委員、金子委員、髙橋委員、秋山委員、林氏(山口委員代理)、高木委員、染谷委員、内田委員 - 事務局(6人)
(社会福祉課) 田口課長、松﨑主幹、鈴木副主幹、飛田主査
(保健予防課) 野口専門監、梅宮主査
4 議事
- 柏市自殺対策計画素案について
5 議事(要旨)
1.柏市自殺対策計画素案について
事務局からの説明後、次のとおり質疑応答が行われた。
- 39歳までの就労支援事業を実施しており、資料22ページのライフステージに応じた支援・成人期への支援あたりが該当する。実際に就労支援をしていた若者が今年3月に自殺をしてしまった。本人からの兆候は全く見られず突然だった。就職先も本人を大事にしていて大変ショックを受けていた。社会的な対応が良くても本人に心の闇があったようだ。柏市でも自殺者の多い年代が対象なので、なかなか社会に入れない人への支援を、関係部署と連携しながら出来る限りやっていきたいと思っている。(林氏)
- 相談窓口が多く掲載されているが、利用者がこの計画を見ても、どこに相談すればいいのかが見えにくい。利用者目線の切り口があってもいいと思う。先日、社会福祉協議会で実施している悩みごと相談のケース会議に出席した。相談員は元教員や民生委員など、様々な経歴を持つ方約15人。そこで感じたのは、法律的な解釈より、いかに相談者に寄り添えるかが大事であること。相手に安心感を与える相談体制を組んでいることが素晴らしいと思った。相談員の担い手を増やしていくことがこれからの課題。計画を作っても誰がやるのかを明確にしないと漠然としてしまう。プレイヤーについても少し触れるとよい。(秋山委員)
多くの相談事業を網羅的に羅列しているのはご指摘のとおり。それをいかに適切に案内できるようにするか、方法を考えたい。(事務局) - 長時間労働の問題は労働基準監督署の本来業務であり、企業に対しての監督指導はかなり積極的に取り組んでいる。マスコミ等でも過労自殺や長時間労働は多く報道されており、職場の労働環境やセクハラ、パワハラなどで自殺に追い込まれるケースがある。市の商工振興課や法律相談なども案内しているところだが、年に1回でも、市の担当者と労基署で情報交換できる機会があればよいと思う。(髙橋委員)
- 自殺未遂者へのケアと関係機関との共有が課題。精神疾患の方は保健所に連絡して対応できているが、そうでない場合はどこに連絡すればいいのかわからない。個別案件かもしれないが、今後詰めていけるとよい。自死遺族への対応についても、関係機関を紹介することはできても、積極的に情報提供は難しく、何か働きかけるしくみができたらいいと思う。(金子委員)
- 前回の会議で意見が出ていた、コミュニティ活動についても盛りこまれていてよいと思う。日本産業カウンセラー協会では9月10日の世界自殺予防デーに合わせ、連合との協働で、働く人の電話相談を2007年から実施している。今年も9月10日から12日の3日間、全国で電話相談を実施したので、その特徴をお話したい。40代から60代の相談が圧倒的に多いが、今年度は70代から80代も相当増えて、全体件数は昨年の約1.5倍、1363件であった。もう1つの特徴は20代の相談が少ないこと。おそらく20代は電話ではなくSNSを使っているのだろうと思う。計画にもSNSについて触れられているが、カウンセラー協会としても今後、時代背景の変化に対応できるようにしたい。また、相談相手が従来は職場の上司、同僚あるいは家族が多かったが、今年度は医者や産業医など専門家への相談比率が増えている。これまでのPRの効果で相談窓口の周知が広がっていると考えられるが、実際にはまだまだ足りないし、早期の対応ができれば自殺まで至らないことが多いと考えているので、さらに周知をしていきたい。(中村委員)
資料の24、25ページにSNSについて記載している。現在も市のホームページ、フェイスブックなどあるが、社会福祉課ではツイッターを使い、自殺予防週間や自殺対策強化月間、子どもの自殺が多い8月下旬から9月1日などに注意喚起や啓発を行っている。厚生労働省や東京都では、SNS、主にラインを使った若年層向けの相談を試みとして始めているので、柏市でも対応ができないか検討していきたいと考えている。(事務局) - 千葉いのちの電話の事業報告書を配付させていただいた。昨年度の相談件数が17992件、うち2634件に自殺的傾向があった。24時間365日体制で電話を受け付けているが、なかなかつながらないという声は今もある。かけてくる方は孤独感や自分の存在感、対人関係の悩みや、精神疾患を持っている人も多い。まず死にたいという言葉から入る方もいる。10代の若い方も自殺念慮傾向が増えていると感じる。まずは相手によりそうところから。相手は死にたいけど迷っている、誰かわかってほしい、助けてという声を発信している。先ほどの意見にもあったが、対応する中で行政の相談につなごうとすると、どこに相談してよいのかわからない、相談してもここではないといわれることがある。たらい回しにされたという声も聞く。(いのちの電話渡邊氏)
- 電話は途切れることなくかかっており、受ける電話の台数と人員が少ないのが悩み。実際に稼動している電話は2台程度。相談員の数を増やして対応できるようにしていきたい。(加藤委員)
- あいネットでは資料51ページの生活困窮者への支援で、自立相談支援及び就労準備、家計相談改善事業を行っている。高齢の親の年金だけで15歳から64歳の就労年齢の子を養っている世帯が非常に増えており、生活困窮に陥って家計相談に来る方が増えている。このような家庭の問題点として、親の亡き後に、それまで誰とも関わっていなかった子どもが孤立し、自殺に至るケースがあると聞く。それを防ぐために地域の人や民生委員から心配な世帯があると相談が来ることが多い。そして、この世帯に対して地域の私たちはどのように対応したらよいのかと大変苦悩される声が多く聞こえてくる。民生委員や地域のかたの不安を受け止める相談というのも同時に発生している。地域づくりということが計画に書かれているが、支えている人を支える社会資源はもっと必要ではないか。柏市は相談窓口が充実しており、当事者にとっては便利になっていると思うが、当事者をサポートする地域の方を支援する事業があればよいと思う。(曽波氏)
ご協力いただいている地域の方々を下支えするしくみの必要性を感じた。今後考えていきたいと思う。(事務局) - 市民健康づくり推進員の活動は、資料22ページの成人期への支援にあてはまる。子育て世代のサポートという立場で、地域ぐるみで健康づくりを行っている。子育て世代が母と子の2人きりにならないように、3、4ヶ月の赤ちゃんのいる家庭を訪問し、母と子のつどいや子育てサロンなど地域の情報などをお知らせしている。その中で困ったときには、地域保健課の保健師によるサポートを受け、困難なケースの場合は保健師から連絡してもらうシステムになっている。訪問前に連絡を入れているが、知らない電話番号だとなかなか電話に出てもらえないことが悩みである。(橘委員)
- 追い込まれる前に対応するという考え方が計画の前面に出てきている。商工会議所は事業者の団体なので直接的に関わることは少ないが、職場の心の健康づくりやメンタルヘルスなど、ストレスに追い込まれない環境づくりを事業者の方々に認識してもらうのがポイントであると考えている。働き方改革はある程度浸透してきているが、まだまだこれからであり、啓発活動をしていきたい。最近「健康経営」という言葉が言われている。従業員の健康管理は一般的にコストがかかると認識されがちだが、実は従業員の健康に気を配ることで、結果として従業員が活性化し、職場の雰囲気が良くなることで業績も上がるという考え方である。計画とは直接関係ないかもしれないが、今後進めていきたい。(伏野委員)
- 精神科の医療機関として、最終的に自殺を起こしてしまう人はうつ病、アルコール依存症などの精神疾患を持っていることが多いので、そこを何とか救うことができれば死に至ることは少なくなる。しかし精神疾患の方を全員救うのはなかなか難しい。我々の資質能力向上の必要もあるが、悪化を防ぐため、様々な関係機関との連携は非常に大事である。自殺者が2番目に多い精神疾患はアルコール依存症だが、柏市の保健所が実施しているプログラムは担当者がとても熱心で参加者数も増えている。今後は医療機関同士の連携をさらに持っていきたい。会議で顔を合わせることで、お互いの連携ができやすいと思うので、できるだけ色々な会議に出て、関係を作ることを心がけていきたい。1つ質問だが、以前は自殺者数が毎年3万人以上続いていたが、ここ2、3年減ってきている理由がわかっていたら教えてほしい。(小池委員)
景気の急激な悪化により、自殺者が急増し問題になったのが平成10年頃。国が危機感を感じて、自殺対策基本法を作って緊急対策を施してきたが、その対策が功を奏してきたこともおそらく理由の1つである。自殺者数の増減は景気に左右されることが多い。ここ数年、全国的に自殺者数は減少傾向で、昨年も21000人台まで減っている。(事務局) - 主に人材養成の部分を見せてもらったが、千葉大学で進めている認知行動療法の推進についても観点が入っておりよいと思う。先月、千葉大学大学院の事業が、文部科学省の課題解決型高度医療人材養成プログラムに採択された。「メンタルサポート医療人とプロの連携養成」というもので、これまで推奨してきた認知行動療法をさらに医師、歯科医師、看護師、薬剤師の4職種に広く浸透させ、日常の診療において不眠や不安の患者やその家族に対し、簡単な認知行動療法のアプローチで相談支援をできる人材を養成するもの。大学院の科目等履修制度で実施していくが、基本的には勤務している人が対象であり、オンラインで開講する予定で準備をしている。柏市の教育委員会や学校現場でも認知行動療法の推進については連携しており、今後も幅広くお願いできればと考えている。(清水委員)
- 医療機関同士の連携については、医師会として努力していくべきところだが、行政とも協力しながら一緒にやっていければと思う。資料でいくつか気になったところがある。まず資料4ページ、自殺者数の推移で、「男女別で見ると女性に比べ男性が多くなっており」とあるが、急に男性が増えたわけではないので「多くなっており」ではなく「多く」ではないか。また、性別自殺者の年齢構成を見ると、20代から30代の男性が多い、これは若者にとって生きづらい市ということなのだろうか。なぜ若年層の自殺が多いかはまだわかっておらず、死亡個票の分析をもう少し進めて欲しいと感じる。また、「女性では大きな差異はみられません」とあるが、30代の女性は千葉県より多い。しかし逆に、40代から80代の男性は全て少なく、お年寄りや年齢の安定した人が住みやすい市なのだろうかとも思う。次に6ページ、性別・年代別の上位自殺者数が書かれているが、3位の男性の20歳から39歳の方、この世代にどのような施策を打っていくのか、具体的に考えなければならないと思う。背景にある危機経路を見ると「職場の人間関係」とあるので、具体的に分析して、例えば商工会議所に示していくなどしてはどうか。次に9ページの自殺者の同居状況を見て思うのは、女性の独居者と同居者の自殺者数の差が激しいということ。これは何が原因なのだろうか。ここの分析が欲しい。次に10ページ、自殺の動機として健康問題が一番多いと書かれているが、パーセンテージは「不詳」と一緒である。不詳から何か見えることはないだろうか。そして13ページ、ストレスや睡眠の状況が書いてあるが、自殺との関連が書かれていない。また、もう少し考えなくてはならないのは、自殺は社会的孤立や貧困などが原因となることも多く、「食」を拾ってみるとよいのではないか。朝食を食べているか、量は充分か、誰と食べているかなども大事ではないかと感じた。そして14ページ、具体的な施策を考えていくところで、SNSという話もあったが、市でやっていることは発信だけで受信をしていない。例えば教育委員会で産官学で実施している「STOPit」のようなことができないか。若い男性へのアプローチは、窓口を置いて発信するだけではなかなか拾い上げられないと思う。自殺してしまう人は結局、アプローチできないまま1人で孤立して亡くなってしまう。それをどうやって救い出すのかというところだが、おそらくそういう人は、貧困で孤立していてもご飯は食べているはずである。コンビニには行っていると思うので、そこにアプローチしていくとよいのではないか。(長瀬委員)
資料9ページ、独居女性の自殺者が少ないことについて、国や県の割合と比較して柏市はどうなのかというのを見ていくと少し特徴が出るかもしれない。そもそも女性が男性に比べて独居者が少ないのかもしれないが、確認してみたい。(事務局) - 自死遺族の支援をしており、ホームページを見た方や紹介を受けた方などがわかちあいの場に参加されている。自死遺族だけでなく、グリーフサポートとして愛する人を亡くされた方の会なども実施している。先ほど孤立感という話があったが、それらをなくすべく毎月学習会を行っており、生と死にかかわる講演会なども開催している。人材養成ということでは、グリーフカウンセリング養成講座というものを麗澤大学のオープンカレッジで継続しており、講座修了者に認定を行い、それぞれの痛みのわかちあいの会に実際に入ってもらっている。また、麗澤大学の地域連携講座で大学1年生を対象に、柏市の様々な担当の方と地域の問題についてコラボレーションしながら学んでいる。ちなみにこのグリーフサポートに麗澤大学の学生も1人関わっている。学生自身も20代でいろいろ悩みを抱えており、麗澤大学ではカウンセラーが対応している。(竹内委員)
- 計画を進めるにはどうしたらよいか、進めることが一番大事である。資料56ページ、推進体制の進行管理のところに、「庁内関係部局において定期的に施策の進行状況を把握・点検・評価し、その状況に応じて事業・取り組みを適宜改善等していきます。」と書かれている。そこで、先ほどご意見もいただいたが、商工会議所、労働基準監督署、かしわ若者サポートステーションと市で自殺に関する情報交換の場を設けて、それをこのような会議の場で情報共有していきたいと思う。また、どこでどのような相談をしているのかが一目でわかるようなものがあるといいと思った。最後に、先ほど長瀬委員からコンビニからアプローチするというご意見があったが、これについてはすでにかしわ若者サポートステーションと連携してコンビニにポスターやチラシを配付して周知している。(染谷委員)
- 自殺防止に係る教育のもつ意義や大切さ、重要性はとても大きいと感じている。資料37ページ教職員研修のことが書かれているが、記載内容の他に、教育委員会では教職員に対する自殺予防ゲートキーパー養成研修をこれまでも続けてきている。平成25年度から3年間で柏市の教職員全員に受講してもらい、その後については新規採用者と他市から転入した教員に全て受講してもらっている。このことも事業内容として盛り込んでいく。また、資料44ページ、長瀬委員からもご意見のあった「STOPit」について、SNS機能を使っていつでもいじめの通報や相談ができるしくみを学校に取り入れているが、それに合わせて授業も行っている。基本目標に「助けを求める」という文言があったが、SOSの出し方教育として「STOPit」の機能を絡めて授業を開発した。助けを求める力も子どもたちの大きな力として育むべく取り組んでいる。また、アウトリーチということでは2年前からスクールソーシャルワーカーを学校に配置している。まだ全校ではないが、不登校や引きこもりなどの様々な問題にアプローチし、複雑な家庭環境のなかで苦しむ子どもたちに手を差し伸べていこうということでやっている。スクールソーシャルワーカーは様々な支援につなげることが大きな目的であり、相談窓口などの知識を身につけることが必要。本日ご参加の皆様とつもながっていきたい。(内田委員)
- こども部は主に資料48ページ、子育て世代への支援ということで様々な事業を掲載しているが、紙面の都合上詳しい内容が書かれていないため、市民がこれを見てもなかなかわかりづらいと思う。例えば産後ケア事業は、産後うつになる一歩手前くらいのお母様を早期に見つけて、とりあえず休ませてあげましょうというもの。養育支援訪問事業は、やはり育児で困り果ててしまった保護者のところに保育士や保健師などの専門家が週2回定期的に訪問するもの。子どもの短期支援事業は、保護者が手一杯で子育てが回らず、もう危ないかなというときにいち早く母子分離をしてゆっくり休ませて、他のサービスにつなげるか検討するもの。様々なサービス体制が整ってきているが、必要な人に確実にサービスが届かなければ意味がないので、その意味では委員の皆様からもご意見のあった連携の部分、このような会議に出席したり説明をすることで、まずは関係者に理解していただくことが重要と考えている。いかにつなげていくかが一番大事なので、こども部としても努力していきたい。(髙木委員)
- 最初にこの会議の委員になってから10年が経つ。最初では内容がより深まっており、何とかしたいという思いが伝わってくる。この会議をアピールできるようになってほしい。これからも継続していってほしいと思う。(加藤委員)
- 議事の最後に、議長より、これらの様々な意見をもとに計画を修正することについて、その内容を事務局に一任することに同意を求め、意義なく了承された。
6 意見交換
- 千葉いのちの電話では、相談電話を24時間365日受付しているが、ボランティアが200人を切っており、相談員も高齢化している。相談の電話は受話器を置くとするに鳴るような状態で、朝からずっと電話をかけつづけてやっとつながったという声も聞く。ボランティア相談員を募集しているが、現在のところ13人しか集まっていない。ぜひ広く声をかけていただきたい。(加藤委員)
7 その他(事務局より)
- 12月10日頃から1ヶ月の間、自殺対策計画案についてのパブリックコメントを実施する予定。計画案を公表して広く市民の皆様から意見を聴取する旨を報告した。
8 傍聴
傍聴者なし
9 次回開催予定
平成31年2月7日(木曜日)
ウェルネス柏4階 研修室