約三百年前から行われていた伝統行事 ~鳥ビシャ~
最終更新日 2014年2月25日
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みなさんこんにちは!
今回は、旧沼南町泉・鷲野谷(わしのや)地区で約三百年前から行われていたとされる伝統行事
「鳥ビシャ」をご紹介します。
農業とは一見無縁の様ですが、古くから地方に伝わる伝統行事は、
豊作祈願や無病息災といった願いが込められていて、実は農業と深い関わりがあります。
「鳥ビシャ」とは、関東地方で正月行事として伝わってきた行事です。
その年の豊作を祈願して、半紙に「烏」や「鬼」の文字を書いた的を神官や氏子の代表が弓矢を射る儀式です。
農家の敵といわれるカラスや鬼を追い散らすといわれています。
この「鳥ビシャ」は、しん粉(うるち米の粉で作る)餅の鳥を木に止まらせ飾りつけるので知られています。
泉地区の妙見社・鷲野谷地区の星神社で行われます。
当日は、朝から当番の方々が集まり、神事の準備や鳥作りに大忙しです。
鳥ビシャの神事は神社の境内にて行われ、地区の代表者が参加して執り行われるそうです。
今回私は、鷲野谷集会場で行われた飾り用の鳥を作る様子と、
その後の引き継ぎ行事を見学させて頂きました。
こちらが、しんこ餅で作った鳥です。
黄、赤、緑の食紅を混ぜたものを用意し、カラフルな鳥を表現します。
今年は、黒や金粉をあしらった豪華な鳥もみられました。
こちらのハサミと櫛で、形を整え文様をつけます。
当番は十軒。
八十戸が一年交替で当番を回すそうで、八年に一度回ってくるのだそうです。
以前は、鳥作りは各家々で行っていたそうですが、
次第に各家で鳥を作る風習が廃れて行ったそうです。
地域に受け継がれてきた伝統行事と文化を引き継ぐため、
二年前から地区の子供会に呼びかけ、子供達も鳥作りに参加するようになったそうです。
この日も、地区の当番の方の指導を受けながら、約二十名の子供達が夢中で鳥作りに参加していました。
出来上がった鳥は、各々家に持ち帰って飾ります。
鑑賞後、焼いて食べるとその年は風邪をひかないという言い伝えがあるそうです。
さっそく私もお土産に頂いた鳥、教えて頂いた通りに焼いて食べました。
これで今年は安心です!!
こちらは、鳥木(とりぼく)と呼ばれる飾りの上にとまっている鳥に目をいれているところです。
目がないと飛べませんから、これは大切なことなのだそうです。
こちらが完成品です!
この鳥木と呼ばれる木や周りの苔なども全て当番の方々が準備します。
この鳥木の準備には、なんと一週間ほどかかるそうです。
鳥作りと飾りつけが終わり神事が終了すると、来年の当番の代表の方への「引き継ぎ」が行われています。
「引き継ぎ」と聞き、簡単な申し送りなのかと想像していましたが、しきたりに則った厳かな雰囲気に驚きました。
こちらに用意されているのが、大根で作った鶴に八つ頭で作った亀。そしてマグロの盛り合わせ。
これらはすべて、当番の方々が材料から吟味して用意するそうです。
この他に、神棚には御神酒、鯉二匹、掛軸が飾られます。
引き継ぎの儀式の準備です。
奥に鶴亀、左側の女性が手にしているお皿には、生きた鯉が二匹のっています
御神酒を酌み交わす為の酒器と、手前の器には山盛りのわさびが用意されています。
左右に今年の当番長(ハナと呼ばれています)と来年の当番長が座ります。
中央の総代から御神酒を受け取り、酌み交わします。
御神酒を酌み交わした後、鶴亀に飾り付けられたマグロをお互いに食べるのですが、
その際、大量のわさびと共に食します。
これは、強い刺激が大切な申し送りの内容を忘れないようにする為なのだとか。
左手の男性が背中に差しているのは、引き継ぎの竹(申送帳が先についています)です。
この後、来年の当番長である右手の男性に竹を渡します。
これで引き継ぎの行事は完了です。
その後、用意された料理で宴が催され、無事に今年の行事が終了となります。
神前にお供えされた炊き込みご飯のおにぎり、鶴亀に飾られていたマグロ、鯛のお吸い物など
毎年決められた料理が用意されるそうです。
私も皆さんに混じって、お料理をご馳走になりました!
地域の方々の心のこもった手作りの味は、どれも本当に美味しかったです。
ちなみに、このお料理も神様にお供えしたお下がりだそうで、
食べた人は一年健康に過ごせるのだそうです。
ますます御利益に期待したいと思います!
今回、初めてこの行事を見学させて頂き、純粋な驚きや感動と同時に、
伝統行事を続けて行くことの難しさを感じました。
豊作祈願といった想いは、農業と無縁の人には希薄です。
また、地域の当番制というのも、昔ながらの顔なじみが住む地区だからこそ可能ですが、
人の出入りが激しい都市部では、公平に分担することは難しくなります。
一方で、住民が地域の為に集い、働き、想いを寄せるという伝統行事によって育まれる関係性の意義も改めて感じました。
時代と共に変化する環境や暮らしに合わせて、
伝統行事の在り方も変化するのは避けられないことなのかもしれません。
しかし、例え形は変化しても、個人が個人の為ではなく
地域という公の為に想いを寄せ、集える関係性は受け継いで行きたい財産だと感じました。
もしかしたら、その関係性こそが今の時代の「豊作」という形なのかもしれない。
改めて皆さんが手間暇かけて準備した鳥木を眺めながら、そんな想いが湧いてくるのを感じました。
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柏人への道(農x食x人)
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