村のならわし

  • 丑の刻まいり

    むかしむかし、藤心村にははやり病いがたくさんでたことがことがありました。村人の中にも、はやり病いにかかる者が何人もいました。藤心村には、医者がひとりもいなかったので、病いにかかった者は、静かに寝て治るのを待つよりほかはなかったのです。もとは十八才。

  • 力石

    きょうは観音寺で、久しぶりに村の若者の寄り合いがありました。長いいくさのあとで、この逆井村の若者の数も、指を数えるほどになってしまっていたのです。寄り合いがおわって、それぞれがちょうちんを持ち、暗い境内をてらしながらにぎやかに歩いてきました。

  • 食べかけ雑煮

    「船がきたぞう。」「船がきたぞう。」元旦のお祝いのお膳をかこんでいた人達は、その声を聞くと、おとそでほんのりそまった顔を、いっせいに主人の方にむけました。床の間の前できげんよく雑煮を食べていた主人が、「それ、荷あげだ、急げ。

  • 塩どっけ

    むかしといっても、ほんの少し前までは、増尾や名戸ヶ谷の台地には松がうっそうと茂った林が続いていました。そのところどころに、低地がはいりこんでいて、泉がわき出て、小川が流れていました。秋には小金色の稲がみのりました。冬になると人々は、山仕事に精を出し、一年分のたき木を納屋の中やまわりにつみあげました。